金継ぎに挑戦してみたいけれど、不安があってなかなか一歩が踏み出せない…。多くの方にとって、金継ぎを始めるのに勇気が必要だと思います。私は金継ぎの素晴らしさをもっと多くの方に知ってもらいたいという思いから、初心者が抱えるさまざまな不安を解消したいと思っています。ここでは、よくある不安ベスト9とその解決法、そして、そんな初心者さんのためにどうやってつぐキットを作っていったかをご紹介します。
はじめに:どうしてオリジナルの金継ぎキットを作ろうと思ったのか?
DIYもあまりしたことがない、忙しく働く普通のキャリアウーマンだった私は、金継ぎの魅力を知り、もっと身近なものにしたいという強い想いから、金継ぎを学び始めました。大切にしていた私の器が割れてしまった時に、金継ぎのおかげで新しい価値を持って生まれ変わり、またお気に入りとして堂々と使っていけることに深い感動を覚え、金継ぎを知らないみんなに教えてあげたいと思ったからです。
金継ぎはもともと職人の技術なので、初心者にはハードルが高いです。私が金継ぎに出会った時、東京で習える教室は限られていて、朝から深夜まで残業の多いサラリーマンだった私が教室に通える時間は限られていました。材料の入手も、どこで何を買っていいやら。こんなにたくさん特殊なものがあるのかと、ネットや本で知ったものを手当たりしだいに購入し、結局あまり使わなかったものもあって、たくさん浪費をしました。金継ぎのために時間を作るのも簡単ではな買ったのですが、「こんなに頑張っているんだから、最短で金継ぎが上手になりたい…!」といつも思っていながら、時間だけをかけていました。
私は、金継ぎの全てのプロセスと理由を理解した時、自分が金継ぎを学ぶ過程で感じた課題や、初心者が抱える不安を解消し、家でも簡単に始められる方法を提供したいと思うようになりました。以下は私が通った道ですが、金継ぎ初心者さんが抱える不安を9つにまとめました。そして、それを解消できるようにどんな工夫ができるか、お伝えしたいと思います。
金継ぎの不安9位:金継ぎ完成後の器のお手入れが難しいのではないか
金継ぎを終えた器をどのようにお手入れすればいいのか?壊れる前と同じように使用して良いものなのか?完成後の器の取り扱い法に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、案外、金継ぎ教室では教えてもらえませんでした。金継ぎされた器は、漆器と同じような扱いで、柔らかいスポンジや指で優しく洗ってください。つぐキットに付属している手順書には、修復後の器を長持ちさせるためのお手入れ方法も紹介しています。例えば、電子レンジや食洗機、オーブンは使えないなどの基本的な注意点も簡潔に説明しています。初心者でも適切に器をお手入れし、手間ひまかけて修復した器を長く愛用していただけるよう配慮しています。
金継ぎの不安8位:材料や道具の保管方法がわからない
「使用後に材料や道具をどう保管すればいいのかわからない」というのも、初心者が抱える不安のひとつです。これも、金継ぎ教室に通っていた時、とりわけ教えてもらえなかったので、夏の暑い日に適当に放置してしまっていました。
つぐキットに付属している手順書には、漆を適切に保管するためのアドバイスが含まれています。漆は使用期限があり、品質をできるだけよく保つために、保管に適した場所や温度の説明が必要なのです。(冷蔵庫に入れてもいいです)
またつぐキットは、引越し経験が15回以上もあってミニマリストになってしまった私が、身の回りのものは少なくしたい!=お道具をコンパクトに収納したい!という思いから、本棚に差し込めるほどコンパクトで、筆箱のようなサイズに設計しました。小さくまとまっていると、さっと取り出して、パッと思いついたときに始められますしね。
キットの中は全てのお道具の配置が決まっていて、余計な緩衝材であふれかえっていないので、すっきりとしています。(それまでに売られていた金継ぎキットは、箱のサイズが大きくカサ張る割には、中身の半分以上がプチプチなどのプラスチックの緩衝材でした)また材料が机の上に散らかっていると、不要に物をぶつけてしまったりして失敗の元になるので、全てのお道具が定位置に収まるつぐキットは、金継ぎ成功の秘訣になっていると思います。
金継ぎの不安7位:材料が肌に合わないかもしれない
漆は直接肌に触れるとかぶれることがあり、材料が肌に合うかどうか不安に感じる方も多いでしょう。つぐキットには、肌を保護するためのニトリル手袋が付属してあります。(そして薬剤師でありアレルギー体質の私は、ラテックスアレルギーの方に配慮して、ラテックスフリーのニトリルを採用しました)。手袋は、もったいなくても毎回捨てた方がかぶれリスクが下がるので、次の工程からは安く売っている近所の薬局やコンビニなどで追加で購入していただく必要がありますが、かぶれが起きにくい対策や、万が一漆が肌に付着した際の対処法も手順書に記載しています。初心者でも安心して作業ができるよう、材料の扱いや洗い方についても解説しているので、初めての方も安心して挑戦できます。
ただし、それでもかぶれてしまったら、迷わず皮膚科に行ってくださいね。(跡も残らず、治りますのでご安心を)
金継ぎの不安6位:時間がかかるのではないか
金継ぎは時間がかかる作業というイメージがあり、忙しい日常の中で取り組めるか不安に思う方もいます。確かに、金継ぎを完成するのに数ヶ月かかるというのは、避けられない事実です。
つぐキットでは、限られた時間でも取り組みやすいよう、乾かすのに最低必要な時間が手順書に記載されています。乾燥時間が長く1週間かかる工程と、1~2日乾燥させれば良い工程があるので、自分のペースで無理なく作業できる計画がたてられるようになっています。もちろん、これは乾かすのに必要な「最低限」の時間なので、それより長く放置する分には全く問題ありません。むしろ、より長く乾かした方が良いです。急がないのであれば、のんびり焦らず行ってください。
金継ぎの不安5位:金継ぎされた器の食器としての安全性
修復後の器を食器として安全に使えるのか、という点は多くの方が気にされる不安の一つです。今、いろいろな金継ぎキットが売られているので、この点は必ず注意して比較してください。
つぐキットは、食品に安全の自然素材のみを使用しているため、修復後の器も食器として安心してお使いいただけることを、自信を持っていえます。合成接着剤や化学物質を含まない、本物の漆を使用しているので、安全性への配慮もしっかりされています。
逆に、ちまたに多く流通する安い金継ぎセット(簡易金継ぎ・なんちゃって金継ぎなどいろいろな呼び方をされています)は、かぶれない、短時間でできるといった多くのメリットがありますが、これに用いられる合成接着剤やエポキシは安全性に疑問があります。口に入らなければいいのでは?と思うかもしれませんが、このような簡単に作られて金継ぎは、結構はがれて口に入ります。
伝統金継ぎにも、簡易金継ぎにも、一長一短がありますので、正しい情報を比べてご自身で判断して選んでください。
金継ぎの不安4位:材料の扱いが難しいという不安
伝統金継ぎには漆や金粉などの特殊な材料が必要で、初心者にとっては「扱いが難しそう」と感じることもあります。つぐキットに含まれる23KTの金粉は「消粉(けしふん)」と呼ばれるタイプの金粉で、数ある種類の金粉の中でも初心者が最も扱いやすく、工程が少なくすみ、失敗しにくい伝統的に用いられる金粉です。その扱い方や注意点については、手順書で丁寧に説明されています。初めての方でも安心して金継ぎができるよう、手順書とYouTubeで完全にサポートしています。
一方、天然の漆は、皮膚につくとかぶれを起こす可能性がありますし、乾くのに特殊な環境と時間を要するので、扱いが簡単とは言えません。その中でもつぐキットは手順書やYouTube、その他のメディアでできるだけ情報を発信して、安心して扱えるように努力しています。美しいものには毒があり、なかなか「完璧」なものってないですよね。短時間で硬化する合成接着剤やエポキシと、安全性の面など様々な視点からメリット・デメリットを比べて、ご自身で判断をして選んでください。
金継ぎの不安3位:費用がかかりそうという不安
「金継ぎの材料や道具が高価なのでは?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。その通り。金継ぎには20種類くらいの道具・材料が必要なので、一つ一つを購入して、到底使いきれない量が入っていたり送料がかかったりで、たくさん損をします。…かつての私がその経験をしました。ましてや漆が使用期限1年なんて、最初知りませんでしたから、たくさんいろんな種類の漆を買って、廃棄することになってしまいました。(貴重な資源であるうるし無駄にして、ごめんなさい)
そこでつぐキットでは、初心者が1年以内に使い切れるちょうど良い量の材料をパッケージにまとめました。必要な分だけが無駄なく使えるようになっています。この設計により、金継ぎにかかる費用を抑えながらも、本格的な金継ぎ体験が楽しめるよう配慮しています。
現在4種類あるつぐキット(金、金銀、プレミアム、そして金増量タイプ)の中でも、最もお手頃なつぐキット金は、販売当初から2024年現在まで、なんとか税込9,980円と、1万円を下回る価格を維持してきました。金粉や漆の価格の高騰もあり、これからもこのお値段を維持できるお約束はできませんが、できるだけ初心者にとって敷居が高くない値段でご提供できるよう、製造方法の効率化や販売数増加による仕入れ単価の削減に努めています。
もしあなたが、金継ぎにハマって「もっと金継ぎしたい!」と思ったら、つぐキットに含まれるほとんどの消耗品・道具はつぐつぐで単品でも販売しており、追加購入できるので、その時に買い足せば大丈夫なので安心です。また中級〜上級など、金継ぎに慣れてきた人が購入したくなるようなカスタムグッズも別売りしているので、最初はキット1つから始めてみるのが、最もコスパが良い方法だと言えるでしょう。
金継ぎの不安2位:失敗したらどうしよう
「私不器用だから、金継ぎ失敗してしまうかも…」という不安を持つ方も多いのではないでしょうか。手順書をよんでも自信がない、失敗したくない慎重派のあなたには、各工程を解説した無料のYouTube動画の視聴がとても役立ちます。実際の作業のイメージを視覚的に理解してから取り掛かれるので、これらの動画を見たお客様からは、「手順がわかりやすく、失敗せずに金継ぎができた!」という声をたくさんいただいています。「金継ぎキットを購入した後、届くまでの間に、金継ぎの工程すべてが30分にまとめられたダイジェストYouTubeを見ておいたので、不安を持たずに金継ぎを楽しめました!」と好評です。
さらに裏技ですが、つぐつぐはプロ金継ぎ師が修理を行なっているので、「もう無理、誰か続きをやってほしい…」とあきらめたら、ご相談ください。続きを私たちが行うことも可能です。(金額は器の破損度によるので、まずは見積もりをご依頼ください)なんとかしてあなたの金継ぎをやり遂げ、完成させます!
金継ぎの不安1位:技術が難しそう
金継ぎは「技術が難しそう」「細かい作業ができるか不安」と感じる初心者は多いものです。従来あった金継ぎキットは、難しい専門用語が多くて、一般の方には意味が伝わりにくいことがありました。中にはカラー写真がなく文章だけで伝えるものもあったり。
日本の伝統文化を感じてほしいと思いながらも、誤解がなく、各工程のイメージが湧きやすいように、小学生でもわかる言葉で手順書を作りました。写真はもちろん全てカラー。2021年の発売当初は6ページだった手順書ですが、お客様の声を元に、2024年には24ページになり、これまで5回以上改良を続けてきました。これ以上改良の余地があるかわかりませんが、お客様の声がもっと蓄積されたら、さらに改訂するかもしれません。
読む量が多すぎず少なすぎずで、各工程の内容が初心者の方にもわかりやすい、シンプルで丁寧な、ちょうど良い量であるため、初めてでもスムーズに取り組めると思っています。実際に「初心者ですがつぐキットで、一人で金継ぎ成功しました!」とたくさんのうれしいお声をいただいています。
また、2024年からは「金スタライブ」(インスタライブ・YouTubeライブ)をはじめ、どなた様も無料でリアルタイムに金継ぎ師に質問できるサービスを、週1回配信中です。どんなに手順書や動画を完備していても、金継ぎ中に思わぬ疑問が湧いてくるもの。そんな時は、お気軽に、つぐつぐのライブ配信で質問してください!どんな些細な質問にも、実演しながらお答えするので、かゆい所に手が届く、アフターフォローもバッチリだと、コアな金継ぎファンから好評です。視聴者さんには、初心者から、すでに金継ぎ師として活躍されている方もいらっしゃり、私の金スタライブでたくさん質問してくれていまして、皆さんの活動の情報のハブとして支えになっていることを嬉しく思っています。
最後に
金継ぎに挑戦してみたいけれど、不安があってなかなか一歩が踏み出せない。そんな方のために、私は独自の金継ぎキット「つぐキット」を作りました。過去の自分を思い出し、初めてでも安心して楽しめるように設計されています。金継ぎキットを作って売ったら終わりではなく、手順書は改訂を重ねていますし、YouTubeやこのようにお役立ち記事もどんどん発信していますし、金継ぎに挑戦するみなさんが楽しく、そして成功できるように、いろいろなサービスを行っています。
金継ぎに興味はあっても不安があった方。つぐキットを通じて、金継ぎの楽しさと出来上がった時の喜びを実感していただけると嬉しいです。
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