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金継ぎキットがつくられた経緯とストーリー

この記事では、伝統工芸や漆芸となんら関係のなかった、普通の女性である俣野由季(またのゆき)が、金継ぎと出会い、学び、つぐキットを開発して会社を起こすことになった秘話をお伝えします。

第1章:キャリアの転機と金継ぎとの出会い

大阪出身の俣野は、薬科大学を卒業後、大手製薬会社で働き始めました。4年間キャリアを積み重ねる中で、ふと「これからの世の中、英語が話せないと、キャリアアップできないのでは?」という考えが強まり、カナダへの留学を決意します。その後、医者になりたいと志してドイツへ留学。しかし、医学部への入学が叶わず、日本へ帰国しました。その後彼女は、国内の製薬会社に勤める傍ら、週末に経営学(MBA)を学びながら、再びキャリアアップを目指しました。

そのとき、ドイツ留学中に購入した大切にしていた器を割ってしまうという出来事に直面しました。この器をどうにかして直せないかと調べていくうちに、日本の伝統技術である「金継ぎ」と出会ったのです。壊れた陶器を漆で修復し、その割れ目に金や銀の粉を蒔いて修復跡をあえて目立たせる金継ぎは、ただの修復ではなく、美しさと新しい価値を与える技法だと思いました。この伝統技術に深い感動を覚え、彼女の心はすっかり金継ぎの魅力に引き込まれていきました。

第2章:金継ぎの技術を身につけたい。夢を追いかけて

会社勤めを続けながら、時間を見つけては金継ぎ教室に通い、家でも練習を重ねました。通常3年かかると言われる技術をわずか8ヶ月で習得するほどの情熱を持って取り組み、金継ぎの奥深さや楽しさをさらに感じていきます。そして次第に「この素晴らしさをもっと多くの人に伝えたい」という気持ちが芽生え、これまで勤めてきた大手製薬会社を脱サラし、積み上げてきたキャリアを捨てます。2020年に「kNotPerfect株式会社(のちに「株式会社つぐつぐ」へ社名変更)」を立ち上げ、金継ぎの魅力を広める活動を始めることを決意しました。会社設立前、さまざまな金継ぎ師や職人のもとを訪ね、13名の金継ぎ師から業界の実情を聞き取ると、伝統工芸の世界には多くの課題があると気づきました。弟子入りするハードルが高いこと、アルバイトとして働いてもすぐ辞めてしまうこと、女性が長く働き続けるための環境が整っていないことなど、金継ぎを学びたいと願う人が技術を習得しやすい環境を作りたいと思うようになりました。

第3章:初心者向け金継ぎキット「TSUGUKIT」の開発と展開

会社を立ち上げてまず初めに、より多くの人が気軽に金継ぎを楽しめるようにと、初心者向け金継ぎキット「TSUGUKIT(つぐキット)」の開発に取り組みました。日本の本物の伝統を残し、世界中に広めたいという思いから、このキットには、漆などの自然素材と、食品衛生法にも適合する安全な材料だけを採用しました。代表が複数の金継ぎ教室に通い、たくさんの材料を買い、お金も材料も無駄にして遠回りしてしまった経験から、必要な材料を少量ずつまとめ、シンプルな手順書をつけ、無料のYouTube動画を配信することで、初心者でもわかりやすく金継ぎを体験できるよう工夫しました。2021年5月に販売を開始すると、予想を超える反響があり、楽天・アマゾン・Yahoo!といった大手通販サイトで3冠を獲得するほどの人気商品となりました。多くの人がつぐキットを通じて「自分の手で壊れたものを直す」喜びを感じ、ひとりで会社を運営し、キットを作って販売している代表の元には、たくさんの「ありがとう」の声が届きました。

つぐキットの販売が広がる中で、「先生に直接金継ぎを教わりたい」というお客様の声が増えていきました。そこで、コロナ禍の2021年に、思い切って実店舗を東京・恵比寿に構えることを決意しました。その後、2022年には浅草店もオープンし、実際に金継ぎを体験しながら学べる教室を複数展開することに成功していきました。

第4章:金継ぎを通じて伝えたい想いと文化の広がり

代表が金継ぎを広めたいと思う理由の一つは、「物を大切にする日本の文化」を人々に再認識してもらいたいという想いにあります。壊れたものをただ捨てるのではなく、自分の手で修復し、新しい価値を見出す。これこそが金継ぎの魅力です。消費が激しい現代社会の中で、物を修復して長く使うことの大切さを広め、金継ぎの技法を通して物の価値を考え直してもらいたいと考えています。

つぐつぐの活動は日本国内だけでなく、世界中に広がりを見せています。金継ぎは「KINTSUGI」として海外でも知られ、多くの人々がその美しさや哲学に共感しています。日本の伝統工芸である金継ぎを通して日本文化を広める活動は、国内外のメディアでも注目されるようになりました。コロナが明けて海外から外国人が日本に来ることができるようになってから、毎日たくさんの外国人がつぐつぐの店舗へと訪れます。金継ぎを通して「壊れたものにも新しい価値がある」という考えが広がり、物を大切にする心が再認識されています。

第5章:未来へ続く金継ぎの道とつぐつぐの挑戦

つぐつぐが目指すのは、金継ぎの技術を次世代へと受け継いでいくことです。若い世代にも金継ぎの魅力を感じてもらい、次の時代を担う金継ぎ師を育成するための環境づくりに力を注いでいます。また、「金継ぎ師になりたい」「つぐつぐで働きたい」という夢を持つ若い人たちが集まるようになり、技術を伝えるだけでなく、女性が働きやすくやりがいを感じられる職場を提供することを目指しています。代表は、MBAで学んだ経営ノウハウを活かし、誰もが努力すれば金継ぎ師としてお客様に貢献し、成長できる職場を目指しています。

つぐつぐの金継ぎキット「TSUGUKIT」は、今では日本と海外で同じくらいの数が販売され、日本の伝統文化が国境を越えて広がっています。2024年現在、つぐキットの出荷数はますます増加しており、金継ぎへの情熱と想いは世界中の人々に伝わりつつあります。

今は代表ひとりだけでなく、代表が育てたたくさんの金継ぎ師たちが、一緒に活動しています。金継ぎがたくさんのご縁をつないでくれました。私たち「つぐつぐ」は、金継ぎを通じて日本の伝統文化を次の世代へと繋ぎ、多くの人々にその魅力を伝え続けていきます。

私たちの思いがたくさん詰まったつぐキット。金継ぎをちょっとでもやってみたくなったら、ぜひこのショップサイトからお買い求めください!店舗でも販売しています!

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